【ニッポンの食、がんばれ!】地大豆、苦難経て特産品に(産経新聞)

 ■“地産地消”高まり味に評価

 効率的な栽培には不向きでも、地域ごとに残ってきた「地大豆」が近年、地産地消の意識の高まりから「特産品に」とクローズアップされつつある。神奈川県の地大豆「津久井在来」は加工業者に好かれない苦難の時代を経て、最近では有名菓子店の食材にも採用されるなど有望に。普及の草創期には「地元の物にこだわりたい」という研究者の強い思いがあった。(草下健夫)

 ◆膨らむアイデア

 「こんなに甘くてすばらしい大豆が、なぜ注目されていないの?」

 相模原市南区で酒店を営む岡本政広さんは4年ほど前、津久井在来の存在を専門紙で知った。風味の良さに驚き、まずは干し納豆を商品化した。食の問題に関心が高かった岡本さんは自身でも津久井在来を栽培するなど研究。現在は加工業者の協力で、干し納豆、豆腐、きな粉、いり大豆、納豆の商品を手掛ける。昨秋からは地元の百貨店にも並び、リピーターが定着しているという。

 「津久井在来を特産品に」と意気込む岡本さんは「醤油(しょうゆ)アイスを試作してもらい、トッピングも津久井のきな粉にしたら、やっぱりうまかった。黒蜜(みつ)をかけたデザート豆腐もよいかも」とアイデアを膨らませる。

 岡本さんの扱うきな粉を採用するのが「鳩サブレー」で知られる豊島屋(鎌倉市)だ。同社近くで営む甘味(あまみ)処「八十小路(はとこうじ)」の「本わらび餅(もち)」にかけるきな粉に、一昨年秋から使用。同社の久保田陽彦社長は「香りの良さ、品質の高さが甘さにつながっている」と、採用の決め手を語る。

 店のお品書きに「津久井在来使用」などとは書いていないが、舌の肥えたお客さんから反響がよく、ベスト3に入る人気ぶりという。「神奈川県産を使う喜びもあるが、地元だからではなく、風味が品物に合うからこそ、使っていきたい」と久保田社長。

 ◆かつては不評

 人気が高まる津久井在来だが、苦難の時代も長かった。昭和50年代、国が米から大豆などへの転作を奨励。これを受けて神奈川県が大豆を研究した際、「効率の良い品種もあるが、地元に細々とでも残ってきた地大豆があり、成分がよくおいしい。(地元という)文化性も考えたい、と普及推進を決断した」と、当時研究に当たった県農業技術センター・横浜川崎地区事務所の山田良雄所長は振り返る。

 ところが、「生産性重視の時代で、豆腐に固まらない、納豆にするには粒が大きいなどと、加工業者の反響は惨憺(さんたん)たるもの。津久井は確かにコクがあるけど“規格外”とされた。研究者の思いと市場原理が合わなかった」(山田所長)。

 その後、この10年で情勢が変わってきた。「地産地消が重視され、価格が高めでも質を求める風潮になってきた。地域の共存共栄のよい素材として、加工業者の技術が保たれているうちに軌道に乗ってほしい」と期待を寄せている。

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 ■アジア中心に加工品重用

 大豆はタンパク質をはじめ、炭水化物、脂質、食物繊維、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ビタミンE、ビタミンB1、葉酸などさまざまな栄養を含み、アジアを中心に加工品が重用されている。中国原産で、わが国では弥生時代中期には利用されていたとされる。

 農林水産省の資料によると、例えば、豆腐はトウブ(中国)、タウフ(タイ)、ダウフ(ベトナム)、ドウフウ(ミャンマー)、トウブ(朝鮮半島)、タフ(マレーシアとインドネシア)と呼ばれ、作り方もほとんど同じという。

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 産経新聞社は「ニッポンの食、がんばれ!」キャンペーン(www.nippon−shoku.com)を通じて食料自給率の向上を目指します。

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